*** その後の話 ***



「ポップ〜!何がいけなかったんだーーー!!」

ダイは困惑していた。

自室の扉の向こうから聞こえるのはどこか哀れな雄たけび。

「ポップ・・・」

少し困った風に見上げると、ポップはもっと困った風に笑い返してきた。

「ごめん・・・迷惑だよな」

「いや迷惑なんてとんでもない!むしろおいしいし!

ポップが俺の部屋にいるなんてまるで一輪のたおやかな花が――」

最近彼は、国政関連の難しい本ばかりを目に通していたせいか

語彙が混乱してしまい無駄にポエマーになっている。

しかしポップは俯き・・・まぁようするに聞いちゃァいなかった。

そんなポップの肩にそっと手を置こうとした時、

「おいっダイっ!!ポップに変なことなどしていないだろうな!

もしも何か間違いがあったとしたら――

いや、ポップ誤解しないでほしい。お前のことは信じているが――っっ」

ゴギャンッ

激しい怒号が聞こえたかと思うとそれは声にならない悲鳴となる。

続いてどさっと倒れる音。

「うるさいっ!!次に騒いだら殺すわよ!」

まるでカマイタチのように切り裂くレオナの怒声と凄い音で閉まる扉。

辺りが急に静かになる。

「レ、レオナ怖ぇ〜」

知らずに腕をさすりつつダイは呟いた。

「ってか何をしたらゴギャンッなんて音が鳴るんだ?」

凶器が何なのか検討も就かず、しばらく震える戦士達。

しかし震えがようやく収まる頃、ダイはあることに気がついた。

(ポップが俺の部屋に寂しげに訪れ、執着尾行並のヒュンケルは

聖なる力の前に力尽きた・・・もしかしてこれはチャンス!?)

ゴギャンッが聖なる力かはさておき、お触りくらいはセーフだろうかなど

どこかオヤジめいたことに彼の脳はここ最近一番の回転率をみせる。

「ダイ・・・変な事聞いちまうんだけどさ」

「一応平均サイズは超えている自信はあるよ!」

フル回転しすぎたらしい。

「なんで俺がお前の下のサイズに興味を持たなきゃいけねぇんだよ・・・」

「もたないの!?」

「いや普通にもたないしっそうじゃなくて、その・・・一般的はどの程度の割合で・・・」

だんだんと声が細くなるにつれ頬に朱が差す。

(あぁっポップ!まるで夕日をバックスクリーンに飾り、その揺れる瞳に――)

相手が言いよどんでいる間に再び無駄なポエムが発動する。

そんな愉快な出来事に気がつくことも無く、ポップが必死に言葉を紡ぐ。

「・・・するものなんだ?」

「ごめん、主語を入れてくれると実に答えやすいんだけど・・・」

思わず素でツッコミを入れてしまう。

「だから・・・えっとぅ・・・その、床の間で・・・」

「あぁエッチのこと?」

「・・・意外とストレートに言うんだな」

「まぁね――ってそれはもしかして否、もしかしなくともヒュンケルとの!?」

驚きのあまりポップの肩を力強く掴んで揺する。

「う゛っ・・・うん」

ますます真っ赤になってこくんとうなずく。

(かわいい!かわいい!!かわいいけどーーーー!!!)

ジレンマしているダイにポップが慌てて言う。

「悪いっ気持ち悪ぃこと聞いちまって!忘れてくれっ」

「そんなことないよっポップの相談なら煮えたぎる火山の墳口に飛び込んだって

聞きにいくよ!」

「噴火口内で何があったんだんだよ俺・・・」

本人は至って真面目に言ったのだが通じなかったらしい。

「でもよ・・・ありがとな」

不意の笑顔にドギマギしてしまったが、気取られぬよう取り繕う。

「えっと、とりあえず最後にしたのっていつなの?」

ポップはしばし思案をしてから答えた。

「多分――二ヶ月くらい前かな」

「二ヶ月も!?」

思わず発した奇声にポップがびくっとする。

「あ、あぁ・・・まずかったかなー」

(こ、これは敵ながら何とも哀れな・・・でも
ごめん―)

ダイはとても爽やかな笑顔をおくる。

「いや、もっと間があってもいいと思うよ!」

ポップの表情も嬉々となる。

「そうだよなっ別に嫌ってわけじゃねぇんだけど

翌日のダルさを考えるとどうもする気が失せるんだよな〜」

微妙に嫌な言葉が聞こえてきたが流すことにした。

コホン、と咳払いをしてから笑顔で続ける。

「どうかなポップ、一度他の人―例えば俺と―」

しかし意中の人物は明後日の方向を向き拳を握っていた。

「うっしありがとなダイ!なんか自信ついたわ。

んじゃヒュンケル持ってそろそろ部屋に戻るな!」

ヒュンケルにしてみれば全くつけなくてもいい自信を身につけダイの部屋を去るポップ。

閉まったドアの向こうから聞こえるのはズルズルと重たいものを引きずる音。

あんまりな展開に、ダイはそのまましばらく動けなかった。


後日、血走った眼をした某剣士に挑戦状を叩きつけられることを


彼はまだ知らない。




   




『S.S.S』のはにお様にせっかくリクをしていただいたのに
こんなに遅筆な上に駄文しか書けませんでした・・・
頂いたリクが
「裏の続きでヘタレな兄貴」だというのにヒュン兄の出番が皆無です・・・
はにお様!申し訳ありませんでした!(土下座


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